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小説・設定置き場:GE系

2050以前の事にばかり力を入れていました(過去形)

GOD_EATER DAYBREAK 第一話

本編 DAYBREAK

以前書いていた本編を練り直したもの。タイトルを修正、『ネメシス』がメインで2074中期からの話

 

第一話「新人」

 

 

『私』が最後に見たものは、紅色の夜明けだった。

 

 

Side.Ryokuno

 

「気を楽にして、心の準備が出来たら目の前にある神機を掴むといい。
それだけで、君は神機使いになれるんだ」

 

きっと、これは仕組まれた道なんだろう。

 

「君達には、これからアラガミという生物と戦ってもらう」

 

それでも、私はこのレールを走り続ける。

 

「準備は良いかい、海音リョクノ君」
「……は。そんなものしたってしなくたって、何も変わらねぇよ」

 

例えそのレールが、死に繋がっていようと。

 

 


「姉さん、痛かったですか」
「まあまあ」

 

今は秋の中頃だと、職員から聞いた。

……適合試験とやらを終えて部屋を出ると、扉のすぐそこに『弟』の海音サヤがいた。
……弟。それ以上でも、以下でもない。私の知るサヤは、もうそこにはいない。

 

「僕はあまり痛くありませんでしたよ」
「そうか」

 

さり気なく行動を共にしてくるので足を早めるも、サヤも同じように足を早める。

……嫌だ。来るな。来るな。お前の声なんか聞きたくない。

 

「姉さん」

「……」

「姉さん、どうして逃げるのです」

「来るな」

「どうして」

「来るなって言ってるだろ!?」

「………」

 

どこまでもどこまでも、サヤは追いかけてくる。

なんで。どうしてそこまで、私に執着するんだ。

意味が分からない……意味が……。

 

 

 

Side.Saya

 

ラウンジ、というものがここにはあるらしい。

 

「……」

 

コーヒーなるものを飲みながら、思考を巡らせる。

……正に亡失、と言ったところだ。

やっと会えたというのに、姉はひたすら自分を避け続ける。

どうして。何が悪いのだろうか。

 

『僕ですよ、姉さん』

『……お前なんか…お前なんかサヤじゃない』

 

なら、僕は誰なのだろうか。

少し『神』が混ざった程度で、ここまで拒絶されなければいけないのか。

どうして。

 

「……僕だって、貴方しかいなかったのに」

「…もしもーし?聞こえてるか?」

「ッ」

 

ぼそりと呟くと急に声をかけられ、白い服を着たオレンジ髪の青年が前かがみになってこちらをじっと見つめていた事に気付いた。

……口ぶりからして先程から話しかけていたのだろう。

 

「あ、やっと気付いた……お前、新人か?」

「……?ええ」

 

その事を確認すると、青年は体を真っ直ぐにして腰に手を当て、高らかにこう告げた。

 

「俺、第一部隊隊長の藤木コウタって言うんだ。よろしくな!」

「……分かりました」

「おうっ!そうそう、お前の名前は?」

「…海音サヤです」

 

……なんと言うか、陽気な感じが滲み出ていると言うか。

僕の名前を聞いたコウタさんは少しだけ目を見開いて、興味深そうに尋ねてくる。

 

「アマネ……もしかして、姉さんいる?」

 

今はあまり触れられたくない話題だった。

少しの苛立ちを隠しつつ、逆に問い返す。

 

「……どうしてそこまで根掘り葉掘り聞くんです?」

「ん?いや、さっき会った新人が『海音リョクノ』って名乗ってたからさ……って、そうじゃなくて。俺、お前ら三人の指導をする事になってるんだ!」

 

……新人育成、というヤツか。

まあ、当然といえば当然なのだが……正直、この人の手に負えるか心配だ。

そこは姉さん次第かもしれないが……

 

「……って、三人?」

「ああ。確かマリス・エイデン……だったかな。支部長から聞いた話だと…施設から抜け出した人間のうち、保護できたのは三人だけ。って言ってたと思う」

「……へえ」

 

……口ぶりだと施設の存在、そしてその崩壊を知っていたかのように思える。

問い詰めたい所だが、コウタさんに聞いても仕方が無いだろう。それに助かった事に変わりは無いし、その事に文句を言うつもりもない。

 

「それと……この後、具体的には一二〇〇に第四会議室って所に来てくれないか?神機使いになりたてだから分からない事だらけだろうし、コウタ先輩が教えなくちゃな!」

「……ええ。分かりました」

 

返事をすると、コウタさんは「じゃ、また後でな!」と手を振ってこの場を後にする。

……思ったより頼もしそうな人だ。

この人によって僕と姉さんの仲が改善されれば良いのだが……。

 

 

 

Side.Malice

 

『テメェはもう用済みだ』

 

あの『男』の言葉が、脳を飛び交う。

左腕を失ってなお笑みを貼り付けていた、あの男。

逃げ出す最中でいくつも視界に映った、『自分』の死体。

一体、私が何をしたというのか。

……等と考えていると、会議室の扉が開いた。

 

「……、」

「…おや。貴方がマリスさん、ですか?」

 

出てきたのは白髪緑眼の青年で、それなりに正常な感覚を持っていそうな人間だった。

会議室に来たという事は、この人間も私と同じように施設から保護され、ここに入隊した新入りなのか。

 

「ああ」

「へえ、貴方が。……申し遅れました。僕は海音サヤ、と申します」

「サヤ、…か。改めて自己紹介をする、私の名はマリス・エイデンだ」

 

聞いた事もない名だが……どこか女らしい、と感じた。

……名を名乗った時の笑顔が、どことなくあの男に似ている。絵に描いたような笑顔を顔にそのまま貼り付けたような顔が……

 

「どうしました?顔色が悪いようですが」

「……貴様が気にする事ではない」

「おや、そうですか」

 

……一体この男は、施設でどんな扱いを受けていたのだろうか。

そんな事を考えていると、勢いよく扉が開かれた。真後ろで激しい物音がしたせいか、サヤが肩をビクッ!!と震わせている。

……どうやら、指導をしてくれると言っていた人物……藤木コウタ、だったか……コウタが来たようだった。

 

「すまん!遅れた!……って、リョクノは?」

「…姉さん?まだですね…」

 

笑みを引きつらせるサヤ、息を切らしているコウタ。

……リョクノとかいう人間は少々ここを甘く見ている気がする。私も入隊したばかりだが。

どうやらリョクノはまだ来ないようだったので、準備をして待つ事になった。

 

 

「あー、悪い。考え事してたらこんな時間になってた」

「遅い」

 

結局、その五分後くらいにリョクノという人物は現れた。

……もう少し遅かったら殴りつけていたと思う。

 

「あはは……次から気を付けろよ?」

「……ああ、すまんな」

「…………」

 

さっき言っていたが、どうやらサヤとリョクノは姉弟らしい。

だが、お互いにどこかよそよそしい……やはり、施設にいただけあってただならぬものを抱えているのか。

 

「よし、じゃあ全員揃った事だし…ミーティング、始めますか!」

「……了解、だ」

 

 

それから二時間ほど、神機使いについて、極東支部について、現在の世界の状況についての授業が続いた。

神機使いとは、偏食因子を体内に投与して神機を扱えるようにした人間だ、と。

極東は世界有数の激戦区で、アラガミも多いが人も多い、と。

どうやら今は人口も増加傾向にあるらしく、聖域なるモノも存在しており当分世界の危機は訪れないらしい。だがアラガミがいる事に変わりはないので、それらをどうにかする為にも神機使いになってもらった、と。

……印象に残ったのはこれくらいだろうか。

 

「あ、そうそう」

 

サヤとリョクノが伸びをしている所に、コウタは付け加えるように告げた。

 

「新人研修が終わったら、三人にはある部隊に所属してもらう事になってるんだ。確か、支部長は『最初期は極東で活動を行い、実力を兼ね備える様になれば世界各地の支部に援護しに行く』予定の部隊……って言ってたかな」

 

さらっと物凄い事を聞いた。

二人も目をぱちくりさせているが……何、そんな話、一度も聞いていないぞ?

 

「ごめんごめん……今日決まった事でさ。でも、そんなに気負う必要はないからなー?経験を積み重ねていけば、実力っていうのは必ず付いてくるし」

「そういうものなのか……?」

「遅かれ早かれ、な」

 

努力次第、といった所か。

…まあ、神機使いになったからにはやるしかない。

 

『テメェはもう用済みだ』

 

……この言葉を否定する為にも、戦わなければ。

 

 

Side.Third person

 

夜のラウンジに、二人の青年はいた。

 

「それでさ、俺すげぇ頑張ったんだよ!

先輩が何も教えられなかったら情けないだろ?だから頭痛いのを我慢して勉強しまくって…」

「はは、コウタは頑張り屋さんだなぁ」

 

ブラッド隊長の神威ヒロと、第一部隊隊長の藤木コウタだ。

二人は水を飲みながら、自らの近況について話していた。

 

「コウタ、新人さんの様子はどうだった?」

「あの三人、か?うーん……皆素直なんだけど、何というか……」

「……?」

 

どう表したものか考え込むコウタと、相手の顔色を伺うヒロ。

ああでもないこうでもない……と、言葉に迷っているようだった。

 

「何か重いものを背負ってる、とか?」

「そう!そうなんだよ!ずっと複雑そうな顔しててさ…」

 

重いもの。

……無論新人の三人だけが背負っている訳ではないのだが、人より比べて軽かろうが重かろうが彼らは自分の事情をどうにかするのに必死だった。

 

「サヤ、って新人も何か呟いてて…何だか、大切な人に突き放されたみたいだった」

「大切な人に……」

 

その痛みを想像した後、気持ちを切り替えるようににっと笑ってコウタは続ける。

ヒロはそれを、真剣な様子で聞いていた。

 

「入ってきた直後とはいえ、大事な後輩じゃん?だけど、人の事情に口出すのってあんまり良くないだろ。甘やかすのも良くないし…だから、俺は側で見守っとこうって思うんだ」

「……うん。それが良いと思う」

 

その後もしばらく話し合い、夜が更ける頃に二人は眠りについた。

新人三人もまた、時間こそ遅かったものの眠りに落ちていた。

 

そうして、神機使いになってから初めての一日はあっという間に終わりを告げた。

 

 

続く