小説・設定置き場:GE系

2050以前の事にばかり力を入れていました(過去形)

Twitterで書いた短編集(現在4つ)

今日もまた、あなたを見つけられなかった。

極東支部の屋上から、星空を見上げる。南の一つ星が薄く輝いていた。

 

「あなたは、星を探すのが好きだったよね」

 

虚ろな街並みを見下ろして、あなたの家を探す。明かりが点いているけれど、そこにあなたはいないのだろう。

星空をまた見上げて、私は星を数え始めた。
あなたの姿が見えなくても、きっと同じ空を見ていると思ったから。

 

 

今日もまた、君の目が覚めなかった。

 

(星空/シグレ)

 

 

 

 

 

ついに手に入れた。ついに殺した。

やっと愛してもらえる。

 

その筈だったのに、何故こんなにも満たされない気持ちでいるのだろうか?

 

「おかしいですねえ」

 

思わずそんな事を呟いた。姉であり愛する人である海音リョクノを殺せば、もっと幸せになれると思っていたのに。

なのに、何故。

何故、胸が空っぽになってしまったのか。

 

「貴方が海音リョクノを殺したからだよ」

 

…自分の中の『私』が暗闇の中で云った。
人間如きが、分かりきった口を。

 

「分かるよ。だって、私は貴方」

 

……下等生物と一緒にされてたまるか。

 

「その下等生物を愛したのは誰?

愛してもらいたくて、根拠の無い自信を抱いて殺したのは誰?……私、そして貴方だよ」

 

…………。

 

「私と貴方を拒絶するリョクノを殺してしまえば、愛してくれるリョクノが残ると思ってた」

 

やめろ。
貴方の言葉は、『僕』の言葉は気味が悪い。

 

「だけど」

 

やめろ。やめてくれ、聞きたくない。

 

「殺したら、何もかも消えちゃった」

「愛する人が消えちゃった。バカだね、私と貴方って」

 

 

無我夢中でハサミを自分の首に突き刺した所までは覚えている。

…目が覚めると、鮮やかな花々が揺れる草原にいた。ここはもう「現世」ではないという事を、頭のどこかで理解した。

周りを見渡すが、自分以外は誰もいなかった。

『私』でさえも、そして僕が殺した『海音リョクノ』も。

後を追ってハサミを突き刺したはずなのに、結局僕は一人ぼっちになったという事だ。

姉さんも自分自身も、殺さなければ良かったのに。

本当に、僕はバカだ。

 

(ごめんね/海音サヤ)

 

 

 

 

 

「……ん」

 

輝く金髪の少女が、自分の腕の中で眠っている。

一人で全てを抱え込むようにうずくまり、それでいて『一人は寂しい』とでも言うように俺に身を寄せていた。

恐らくは、無意識。だけれど、そんな彼女が愛おしい。

 

「…みど、う……ずっと、…」

 

普段の彼女からは想像もできない、子供らしい寝言を聞いて頬を緩ませる。

ずっといっしょ、そばがいい、といった寝言だろう。

 

「……ずっと、な」

 

ずっと、ずっと離さない。そう誓って、俺は金髪の彼女の体を包むように抱きしめる。

 

「………えへへ」

 

幼い笑みを浮かべる彼女を見て、今夜は眠れないなと思った。

 

(夜明けはまだ遠く/紅鶴ミドウ)

 

 

 

 

 

桜月キキョウの記憶が戻ったと、保護者であり弟の桜月レイヤから聞かされた。

 

「あんた……ッ」

 

今までの事も、記憶を失う前の事も、全て覚えているらしい。

それはつまり私が自分を殺そうとした事も、覚えているという事。

許されるはずのない行為だというのに、それでも私の「兄さん」は笑った。

 

「……ただいま、ミズキ」

「戻ってこないと、思ってた」

 

殺したいくらい憎かったのに、どこかでは帰るはずのない兄の帰還を待ち望んでいた。

いや、兄を強く想っていたからこそ強い憎しみを抱いていたのかもしれない。

どうして助けてくれなかったの、と。

 

「何で…何で止めなかったのよ!!」

 

私はこんなにも怒っているのに、泣いているのに、兄さんは安らかに笑っていた。

 

「なんで笑ってるのよ……!」

「ごめんなさい。…ミズキがそうやって私に本音をぶつけるのは、久しぶりでしたから」

 

もう堪えられずに、私は兄さんにすがりついていた。

怖かったのに。こわかったのに。

こわかったのにどうして助けてくれなかったのよ。

ずっと守ってくれてたのに、どうしてあの時は。

 

「大好きですよ、ミズキ」

「キキョウなんか……キキョウなんか大っ嫌いよ……!!」

 

兄さん、どうかもう一度だけそばにいさせて。

こんな私を許して。もう一度だけ、私を守って。

 

(消えないヒト/十三堂ミズキ)